第三回
【お料理と器】 (文・岡﨑 彩 写真・菊池元樹)
店主は朝の山に入る。
澄み切った空気を吸い込み野の花を探すため。
装花として皿のなかに一輪がそっと添えられる日も。
器は単体として主張が強くなく、
シンプルでいて使い勝手のいいものを選ぶ。
季節のうつろいをひとさらに映すように、
細やかな心遣いが生きている。
コースでは和の器が続くなかでときどき洋皿が入り込む。
たとえばフランスリモージュ窯の
シルヴィー・コケもそのひとつ。
使用食材のバランス・味・コースの流れをみながら
緩急をつけ、遊び心を加える。
0.1ミリの余白まで見るという
店主のことばを体現する美しさ。
妥協しない繊細さがあらわれる。